モントリオール二日目

rkhonda2004-10-15

今日は公共機関である地下鉄やバスの1DayPassを買って少し遠くに行くことにした。天気は昨日の清々しいまでの快晴とは対照的にどんよりとした空模様。それでも雨が降らないだけマシだと考えを前向きに。
最初に向かったのは1976年にオリンピックが開催されたスタジアム周辺。周囲はイベントも無かったためか閑散とした印象。建物自体も町全体の年数が大分経っているせいもあって、やや古びた感じがした。施設の中心には今でも奇抜に思えるスタジアムの塔がそびえる。
実はこの塔、当然ながらオリンピックにあわせて建設されたものだが、実際に完成したのは1989年というから驚く。アテネの工事の遅れなんて比じゃない。
フランスの有名な建築家により設計された建物は、デザインなどはなかなか面白い見応えのあるものだけど、鉄より丈夫というふれこみの布で出来た屋根を開閉するというアイデアは情けないほどうまくいかなかったらしい。修理に次ぐ修理でコストはどんどん嵩み、最初はその名前から“Big O(オー)”というニックネームで呼ばれていたスタジアムも今では“大借金 Big owe”と皮肉交じりに呼ばれている。
この会場だけでなくモントリオール・オリンピックは20年経っても尾を引くほどの大赤字だった。この教訓からその後のオリンピック運営を、経済性を優先にしていったことから言えば、今日のあまりにも商業的過ぎるオリンピックの礎をこのモントリオールで築いてしまったともいえなくもない。

次に向かったのは聖ヨセフ大聖堂(Saint-Joseph's Oratory)。モン・ロワイヤルの麓にそびえる壮麗なカトリック聖堂。カナダの守護聖人とされる聖ヨセフに捧げられた教会としては世界一の規模で北米屈指の巡礼地のようだ。
モントリオールはやはり都会のため、街全体に余った土地はほとんど見かけない。余すところなく、建物が街とうまく調和しながら建っている印象が強い。だからこそこの場所へ行くと驚きは強い。広大な庭園と奥に力強く鎮座しているかのように見える大聖堂は圧巻だからだ。入り口からきれいに整備された庭園を通り、大聖堂の入り口まで歩く。見た目よりもさらに距離がある。
ここは外観ほどではないが、どこの大聖堂の扉を開いても思わず息をのまずにはいられない。高い天井から落ちるやわらかい光と、いくつもの巨大でいながらも緻密で美しいステンドグラスから差し込む色鮮やかで眩い光が、その中央で交差し、そしてさらに荘厳な世界が広がっていく。人はそれなりにいるのだが、しんと静まりかえり、その深い静けさが重厚でいて慈悲深い独特の雰囲気を醸し出している。
自分ではクリスマスぐらいしかつながりを持たないキリスト教信者にとっての聖地。キリスト教を含む全くの無信仰の自分でさえ、思わず跪いて祈りをささげたくなってしまうほど、そこにはそんな力が感じられた。
カナダに来てかなりの数の教会や大聖堂を見てきた。恐らく日本にいて一生見る分の数倍のそれらをたったこの何ヶ月かで見ただろう。そこにはミーハーな観光客(おれ)に紛れながらも熱心に祈りを捧げる人々の姿が常にあった。彼らにとって神、すなわちキリストは絶対に裏切らない数少ない存在であり、唯一不変の存在なんだなと肌で感じた。そして、そんな存在を持った彼らが少しうらやましく思えたりもした。

Montreal, QUEBEC: Auberge de Montreal(HI)泊

▼オリンピックスタジアム周辺


▼街並み