『傘をささないひとびと』

傘

今の時期、ここではとても雨が多い。晴れの日が続くのはとても稀な事。だから傘は必需品なんだけど、ここの住人は誰も傘なんてささない。傘をさすのは観光客ぐらいだそうだ。だから雨が降れば誰が地元育ちじゃない観光客かってのが分かる。ある老人の話では傘は女、子供が使うものだという。小雨くらいなら何となく理解できるけど、バケツをひっくり返したような雨の日ぐらいは、さしてもいいんじゃないかって時々思う。
まぁさしてもささなくても濡れるんだけどね。あきらめてんのかそれとも意地なのか、お迎えが近そうなじいちゃんもさしてない。レインコートも野暮らしい。自然に逆らわない、それが粋ってやつなのかな。江戸っ子みたい。
でも傘って不思議。どんなに文明が進んで科学が発達しても昔と大して変わらない形のままでいるんだから。結局、自然には勝てないって事なのかな。
雨は個人的には好きな方。なぜって何か時間がゆっくり流れるような気がして物事をちゃんと考える時間が持てるから。でも濡れるのはキライ。休日の昼頃、雨の音に目覚めて布団に包まったまま外を見て、雨の音を聞きながらまた寝るのがスキ。