西スーダンにおける民族浄化
利権が絡まないと助けてくれない世界の警察。
スーダンの民族大虐殺 数十万の難民が餓死、病死する
今週のタイム誌がこの問題をコンパクトにまとめた「逃げ場なし 西スーダンにおける民族浄化で５０万の人命が脅かされる危機が人為的に生み出された」という記事を掲載していたので、早速読んでみたのだが……想像していたより遥かに陰惨で、大量の死者が出るのは避けられない絶望的な状況であることを知ってショックを受けた。
スーダンは一握りのアラブ人が大多数のアフリカ系黒人を支配している国。双方ともイスラム教徒だ。１年４カ月ほど前、西部のダルフールで黒人の農民が政府の差別的な政策に反抗して暴動を起こしたのをきっかけに、政府は《ジャンジャウィード》というアラブ系の民兵組織を使って、ダルフールのアフリカ系住民に対して虐殺・レイプ・強奪を組織的に開始した。
馬で機動性を持たせたジャンジャウィードが村々を襲って殺戮を繰り広げる一方、その前後に政府軍が戦闘ヘリや航空機でこうした村を爆撃や機銃掃射で攻撃を加える共同作戦を展開しているそうだ。
タイム誌には、カイレクという小さな村がジャンジャウィードに襲われた際の具体的な状況を、レイプされたが生き延びた１５歳の少女の証言で紹介している。
襲撃を受けて近くの丘などに逃げていた村民たちは、民兵たちに狩り出され、１ヵ所に集められて約１ヶ月間にわたって、毎日２〜３人を処刑していった。数十人の女性がレイプされた。少女もレイプの犠牲者の一人で、その救いのない状況をこう語った。
５人の男たちから１週間以上、毎日、強姦され続けました。ジャンジャウィードがわたしを強姦し終わると、手と足を一緒に縛って逃げられないようにしました。１０日ほどすると彼らは、母とわたしを残してどこかに立ち去りました。わたしは強姦されすぎて歩くことも座ることも出来ませんでした。これまでに１万人が虐殺されているが、それ以上に問題なのが難民だ。ダルフールではジェノサイドから逃れるために１００万人以上が村を捨て難民化している。隣国のチャドには１６万人が流入した。難民たちは即席のキャンプを設営しているが、政府軍とジャンジャウィードは、このキャンプを包囲し、兵糧責めにしようとしているのだ。
危険を犯して食料や薪を取りに行くのは女性だそうだ。男の場合、民兵に見つかったら１００％殺されるが、女ならば強姦されるだけで殺されない可能性もあるからだというから、悲惨もここに極まれり、だ。
食料の補給を断たれ、すでに疫病が蔓延し始めているキャンプの難民たちが大量死し始めるのは時間の問題になっている。タイム誌はその数は５０万人を超える、という恐るべき予測を出している。
国連もアメリカも、このダルフールでの組織的虐殺を《ジェノサイド》という言葉で表現しようとはしないそうだ。この言葉を使うと、国際社会に介入の義務が生まれるからだというから呆れた話である。２週間前、米国際発展局（ＵＳＡＩＤ）のロジャー・ウィンター副長官は米上院の公聴会で、 ジャンジャウィードの虐殺によって、ダルフールの共同体が長期にわたって生き延び、共同体を再建する可能性は低くなっていると報告、ブッシュ政権もようやく重い腰を挙げて、スーダン政府に圧力をかけ始めたが、すでに手遅れのようだ。タイム誌は次のように書いてこの記事をしめている。
悲劇は、数千人のスーダン人にとってすでに手遅れかもしれないということだ。ＡＩＤのウィンターは「戦争と民族浄化によって根を断たれた男女・子供が大量死することは明白だ。次の段階でおきる飢餓と疫病の蔓延のためで、これを食い止めることはもう不可能だ」と語っている。最終的な死者の数は「スーダン政府がダルフールでの人命救助を、交渉のカードにせずに、最優先するか否か」にかかっている。この危険なゲームで、スーダン政府がそうすると予測するものはほとんどいない。
『海外ボツ！NEWS』より引用。http://www5.big.or.jp/~hellcat/news/frame.htm
【ジュネーブ１日共同】世界保健機関（ＷＨＯ）は１日、民族紛争が続くスーダン西部ダルフール地方で、コレラや赤痢など感染症のため今月中に国内避難民１万人が死亡する恐れがあると警告、国際社会の支援を強化する必要性を訴えた。
ダルフール地方では昨年から、政府軍の支援を受けるアラブ系民兵組織が黒人住民を襲撃、家を追われた国内避難民が８０万―９０万人いる。さらに約１５万人が難民化して隣国チャドに逃れている。
ＷＨＯによると、ダルフール地方は雨期に入り、衛生状態が悪化している上、ＷＨＯなどの支援が届きにくくなっている。ＷＨＯは、国際的な支援が強まれば、犠牲者は３０００人以下に減らせると予測している。（共同通信）
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040702-00000023-kyodo-int
