バンクーバー 1日目。

Backpacker


朝、9時前にヴィクトリアの家を出た。バスでフェリー乗り場へ向かう。バスで乗り継ぎが必要だったため、別のバスに乗ろうとすると運転手に乗車拒否される。荷物が多すぎるからと運転手のおっさんは頑なに拒んだ。時間は結構ギリギリ・・・。別にバスが混んでいるわけでもないが、それが決まりだからと聞く耳を持たない。最初のバスの運転手は大丈夫だよって言ってくれたのに・・・。仕方なくバスを降り、違うルートからフェリー乗り場へ向かうバスの通るバス停へ向かう。目指すバス停はそこからかなり遠い。
そのフェリーに乗り遅れればその日の予定が大幅に狂ってしまう。だからそのバス停へと山のような荷物を抱え、とにかく急いだ。予想外の汗を額から流し、バス停にやっとの事で辿り着いた。周りにはほとんど何もない。ぽつんとバス停を示す頼りない一本のポールがあるだけ。本当にここでいいのかと考えてはみたものの疲れすぎててそれ以上の移動は体が望んでいなかった。
フェリー出発まであと40分。まだバスは来ない。それどころか車すら滅多に通らない。半ば諦めかけたその時、一台の車が目の前に止まった。ウィーンとパワーウィンドゥで助手席の窓が開く。運転席から体を屈めながらフェリー乗り場へ行くのか?と30代半ばぐらいの男の人が話しかけてきた。そうだと答えるとじゃあ乗せてってやるよと笑いながら言ってくれた。車の中で乗車拒否したバスの運転手の話をしたりした。まぁ中にはそんな融通の利かないヤツもいるさと笑ってた。
仕事の関係でよく日本に行くらしく、見ず知らずの自分達にまでとても良くしてくれた。ホントいい人だった。ちなみに待ってたバスの来るバス停はまだずっと先だった。いくら待っても来るわけがなかったが、実際にそのバスはまだ来ていないようだった。いわゆるオンタイムになんて絶対来ないカナディアンタイムってやつである。
乗せてもらったおかげでフェリーには何とか間に合った。チケットを買い大型のフェリーで約1時間半の船旅。到着間近にバスに乗り換えバンクーバーダウンタウンへ向かう。目的地に着いてバスを降りた。これからあの荷物をホテルまで運ぶのかと思い、バスから降りる足取りは決して軽くはなかった。ひとつずつトランクをバスの収納庫から取り出す。・・・バックパック2つがどこを探しても見当たらない。運転手に聞くとそんなのはフェリーからは受け取っていないと無責任な回答。じゃあ、どこに連絡すりゃいい?と聞いても知らないと答え、苦し紛れにポケットから出したパンフレットの電話番号にかけてくれという始末。ホントふざけてる。実際このBCフェリーっていう会社では自分の荷物を示すネームタグみたいなものは荷物にはつけない。行き先ごとに色の違うタグをつけるだけだった。それをつけるとき、何か心配だったけどまぁ仕方ないかと思っていた。
恐れていた事故が自分の身にふりかかった。はぐれてしまったら自分の名前なんてないからどこに行くのかわからない。とりあえず今ある荷物をユースホステルに預けに行く。不運にも荷物が少なくなっているにもかかわらず、それだけでもかなり重い荷物のおかげでユースにつく頃にはくたくただった。ユースからBCフェリーに電話をしたら間違って違うバスに乗ってしまったから次のバスでダウンタウンのはずれにあるセントラルステーションに届けますとの事だった。届けに来いよと思ったけどカナダ人にそれを望んでも仕方ない。それまでかなり時間があったから、とりあえず街を歩いた。とにかくすごい人。久しぶりにこんな多くの人を見た気がした。バンクーバーの街並みは銀座と原宿と表参道と練馬の光が丘とかみたいな団地と西新宿みたいなビル群がそれぞれつながったような感じ。通りには数多くの人種で溢れていて、白人とアジア人しかいなかったヴィクトリアとは全く異なる空間がそこにはあった。とりあえずハラが減ったのでタコスを食べた。
荷物が届く時間はとっくに過ぎていたが、時間通りに来るわけがないので、時間通りに行っても仕方ない。ヴィクトリアより少し高い1枚C$2のバスパスの綴りをセブンイレブンで買ってバスに乗りセントラルステーションへ向かった。そこに着いてからバス会社のBCトランジットのカウンターに行くと建物の裏へ回れと言われ、その場へ行くとまだ来てないからあと15分待ってくれとヒゲ面の出世しなそうなオヤジが言った。15分経っても荷物は来ず、バスすら来ない。するとヒゲオヤジが申し訳なさそうに実は荷物は今日の夜11時半頃にここに来るとちょっとあっけにとられる答え。このおっさん苦し紛れかどうなのかその場しのぎにウソまでついていた。まったくあきれる。しかも自分は悪くないと小学生みたいな言い訳を放つ始末。これがカナダの悪い一面。日本じゃあり得ないことが平気で転がっている。そして朝からいい事と悪い事の繰り返し。まるで早回しの人生を勝手に体験させられてる気分。きっと次はいいことが起きるはずだと信じて仕方なくユースに戻る。
近くのスーパーで夕食の材料を買い、狭くとてもキレイとは言えないユースのキッチンでパスタを作った。調理器具やスペースが限られている場所ではパスタが一番楽。夕食は食堂で食べ、部屋に帰ってビールを飲んだ。パブリックスペースではアルコールは飲めないという面倒な法律があるせいだ。それを飲み干した後、シャワーを浴び、固いベッドの上で泥のように眠りこんだ。バンクーバーでの一日目はこんな感じで終わった。

▼BCフェリー